2016年は「VR元年」と位置づけられており、今後、どんどんとVRを活用したコンテンツが生まれていくと考えられています。
どうしても<ゲーム>や<動画>などの”遊び”的コンテンツにばかりVRの技術は応用されがちですが、実は”学び”の方にも、VRは活かせるのではないか……と、多くの研究機関がVRを使った、新しい学習の形を模索しています。
今回、そんなVRを活用し、子どもの学力アップを実現した中国の論文『A Case Study – The Impact of VR on Academic Performance』(ケーススタディ – 学術成績へのVRの影響)を例にとって、VRによる新しい教育の形をご紹介したいと思います。
中国の中学生を4つのグループに分けてテスト VRで学習効果は変わるのか?
中国に本拠地を置くCHOCENGLISH.com社が行った、実験では「天体物理学」の授業を中国の中学生を以下の4つのグループに分けて行われました。
・VRを用いた授業を受けた直後にテストを受けたグループ
・従来の教育手法で授業を受けた直後にテストを受けたグループ
・VRを用いた授業を受けた2週間後にテストを受けたグループ
・従来の教育手法で授業を受けた2週間後にテストを受けたグループ
※どのグループも学力は平均的になるように調整しています。
実験の概要としては、VRを用いた授業を受けた直後にテストを受けたグループとそうでないグループとの比較。
そして、VRを用いた授業を受けたグループをそれぞれ2週間後にテストを受けさせ、その結果をそれぞれのグループによって比較する、というモノでした。
簡単に言えば「VRを使うことで、学習効果どれくらいの差が出来るのか?」という実験を行ったといいうこと。
親御さんたちからすれば、まるでゲームのようにVRゴーグルをかぶって勉強するよりも、淡々と机に迎えって勉強するほうが、学習効果は高いように思えるかも知れませんが、果たして実験の結果は……?
テストの結果は約30%もアップ! しかも、子どもの学習意欲も上がっている
論文の中で行われたテストの結果では、VRを用いた授業を受けた直後にテストを受けたグループと、そうでないグループのテストの平均点は、20点も差が出ることが判明しました!
テストの結果、なんとVRを用いた授業を受けた直後にテストを受けたグループの平均点は93点、そうでないグループの平均点は73点と、VRを用いた授業を受けたグループの方が、圧倒的にテストの点数が良かったのです。
さらに2週間後のテストの結果では、VRを用いた授業を受けたグループの平均点は90点、そうでないグループは60点と、テスト結果にさらに大きな差が生まれており、このことからVRを用いた授業を受けた方が、記憶に残りやすい(定着率が高い)ことが伺えます。
また、実際にVRを用いた授業を受けたグループへのアンケートも「まるで宇宙の中にいるみたいで楽しかった!」「学校で、もっと早くVRを授業に取り入れて欲しい」という回答が見られ、VRを勉強に用いると、従来の授業よりも記憶の定着力が良いだけでなく、子どもの学習意欲も上がりやすいということも判明したのです!
このテストは、ほんの一例かも知れませんが、このような研究がどんどんと進められていくと、今後は日本の教育現場でもVRを用いた授業が当たり前のように受けられるようになるかも知れませんね?
自宅でVR動画で勉強は出来る? 学習コンテンツに今後期待!
現在、英語学習用のVRアプリなどが配信されていますが、なかなか日本語対応されている学習向けのVR作品は、少ないため、今後コンテンツの充実化が望まれています。
当サイトでも、いくつか学習向けコンテンツとなりうる動画を紹介しており、せっかく買ったVRゴーグルをゲームや動画鑑賞だけで終わらせず、教育コンテンツとしても使いたい方は、NASAなどが公開している動画を見せると、お子さんの学習意欲を引き出すことが出来るかもしれませんよ?
現在、ユーチューブ上などでは、NASAやNature、日本の新聞社などがアップしたVR動画が数多く掲載されており、これらのVR動画をお子さんに見せることで、論文の実験結果のように、お子さんの学習結果を引き出し、将来の夢を決める後押しを親御さんが出来るようになるかも知れません。
一昔まえまでは、コツコツ真面目に勉強することが大事だと思われていましたが、今の時代は如何に効率よく、楽しく子どもに勉強させるかが重要な時代になりつつあります。
なかなか勉強に対する意欲がわかないお子さんに対しては、VR動画を用いることで、そのやる気を引き出すことが出来るようになる――そんな時代が目の前まで来ているのかも?
なお、VRヘッドセット、VRゴーグルには年齢制限があり、殆どのVR商品で12~13歳以上の使用が推奨されています。
小さなお子さんに対する学習効果はVRを用いれば上がるかも知れませんが、その分健康を損なう恐れがあるので、学習のためとは言えVR動画を見せるのは12歳以上からにしてくださいね。
論文出典:A Case Study – The Impact of VR on Academic Performance – (英語)