まず知りたいVRの安全性。VRは身体に良いの? それとも悪いの?
VR初心者の方がまず知りたいのは「VRの安全性」ではないでしょうか?
すでに一般流通しているガジェットとは言え、眼の近くで電子機器を使用するため、人によっては「危険なのでは?」と思ってしまうかもしれませんね。
安心して欲しいのは、スマホを装着するタイプのVRヘッドセットも、PSVRに代表されるようなVRゴーグルに関しても、それを装着して使用したからと言って、身体に害はありません。
VRは没頭感が従来のテレビやスマホに比べた高いだけで、言ってしまえば、テレビ画面の間近で動画を見たり、ゲームをしたりするのと何ら変わりません。
長時間VRを利用していれば、
ゲームのしすぎで気分が悪くなったり、目がショボショボしてきたりするように、VRでも同じような症状が現れることがあります。
VRを長時間使用しすぎて現れる症状も命に関わるようなモノではなく、またVRを長時間使用しなければ、このような症状が現れることもありません。
ただし、VRは映像が360°リアルに広がるせいもあって、視覚情報と身体情報の齟齬(そご)から生じる「VR酔」と呼ばれる症状が発生することがあります。
[ひとくちコラム①]「VR酔」の症状と原因は「車酔い」と同じ!
VRをプレイしていると生じることがある(※個人差があります)、「VR酔」は脳が眼前に広がるVR空間から得る情報とイスなどに座っている身体が感じる情報の齟齬が原因です。
私たちの脳は視覚から多くの情報を得ていますが、VRヘッドセットを装着していると、非現実の世界であるVR空間の中にいると脳は錯覚してしまいます。
この脳の視覚情報をハックし「VR空間にいる!」という風に、脳に思い込ませることでVRは、今までのテレビやゲームにはなかった没頭感を生むことに成功しているのですが、残念ながらリアルの身体は現実世界でイスに座ったままになっています。
脳はVR空間で自分の身体が歩き回ったり、時にはジャンプしたりしていると思いこんでいる。
しかし、当のリアルな身体は現実世界でイスに座っている――この脳が視覚から得ている情報と身体がイスに座っている情報に齟齬を感じることによって混乱し、所謂「気持ち悪さ」を引き起こしてしまうのです。
ただ、この状態は日常生活の中でも、頻繁に引き起こされています。
たとえば、自分は車の助手席に座っているのに、周りの風景は動いていく、脳がこの状況に混乱してしまえば「車酔い」が引き起こされてしまいます。
このように「VR酔」と「車酔い」はほとんど同じメカニズムで生じる症状であり、車酔いを放っておけば知らぬ間に車酔いが治っているように、VR酔も放っておけばいつの間にか治ってしまっています。
だから「VR酔をした、危険だ!」という主張は間違いです。
またVR酔もきちんと対策を行えば引き起こしにくくすることが可能ですよ!
VRと目の関係、小さなお子さんの使用には一定の注意が必要です!
VRヘッドセットを装着することによって、スマホ画面を直視することになります。
この時に、一番気になるのが「目」への影響ではないでしょうか?
現在、VRには以下のような目への影響が懸念されています。
- ブルーライトによる視力低下
- 斜視
※斜視……片方の目は視線が正しく目標とする方向に向いているが、もう片方の目が内側や外側、あるいは上や下に向いている状態のこと、「すがめ」「ひんがらめ」「やぶにらみ」などと呼ぶ場合も
①ブルーライトによる視力低下
確かにスマホの画面からは、紫外線の一種である「ブルーライト」が発生られているため、長時間の利用は目が疲れやすくなってしまいますし、長期間使っていれば疲れ目による視力低下の可能性も懸念されます。
これはVRだけでなく、テレビやゲーム画面でも同じですが、スマホを使用するタイプのVRヘッドセットならば、事前にスマホの画面に「ブルーライトカットフィルム」を貼っておけば、ブルーライトを抑え、眼球への負担を減らすことが出来ます。
またテレビやゲーム同様に長時間、集中して目を使い続けているとブルーライト対策をしていても、視力が低下してしまう可能性があるので、こまめに休憩を挟んだり、眼球運動を行ったりするなどして眼球ケアを行うようにしてください。
[ひとくちコラム②]むしろVRのおかげで目がよくなる可能性も?
当サイトでもご紹介していますが、中国の研究機関の実験では、VRを使用した子どもの視力上昇が確認されています。
またアメリカの医療系VR企業「Vivid Vision」で行われた、VRソフトウェアによる視力回復実験でも視力回復効果が認められており、「VR=目に悪い」というイメージは、もしかすると間違いかもしれないのです。
特にVivid Visionの視力回復実験は、眼科学系のWeb雑誌である『BioMed Journal of Phthalmology』にも「成人の弱視を回復するための新しい治療方法になり得るのでは」と紹介されており、もしかするとそう遠くない未来ではVRを使った治療法が一般的になっている可能性があります。
②小さなお子さんの斜視
VRヘッドセットには、大きく分けてレンズが1つの「単眼」とレンズが2つの「複眼」のモノが存在しています。
このうち複眼のVRヘッドセット(スマホ装着、不装着に限らない)を6~8歳までのお子さんが使用した際には斜視になるリスクがあるとされています。
「ねとらぼ」に掲載された『低年齢層がVRをプレイすると斜視になる危険性? PS VRのソニーと生理学の権威に見解を聞いた』によると、複眼のVRヘッドセットを使って目の使い方を学んでいる最中の6~8歳のお子さんが、間違った目の使い方を無意識に覚えてしまうと斜視を引き起こす可能性があるとされています。
過去には赤緑式の立体映画を見た4歳児がその後、斜視になったという報告もあり、小さなお子さんのVR使用には注意が必要です。
ただ、単眼のVRヘッドセットは斜視を引き起こす「立体視」を行わない仕組みになっているため、7歳以上のお子さんであれば斜視になる可能性は低いと考えて良いでしょう。
ただし、単眼のVRヘッドセットであったとしても、使用中に気分が悪くなったり、お子さんの目に違和感を感じたら、使用を止め速やかに病院へ受診するようにしてください。
参考:低年齢層がVRをプレイすると斜視になる危険性? PS VRのソニーと生理学の権威に見解を聞いた
[ひとくちコラム③]VRで斜視改善効果が?
VRを使用することによって、視力が回復する可能性があることは、すでにご紹介させて頂きました。
先にご紹介した医療系VR企業「Vivid Vision」では、すでに弱視・斜視障がいの治療を行う製品として、VR製品を販売しており、実は2015年から検眼医の治療で活用されてきました。
さらに2017年には自宅でも目の治療が行えるアプリ『Vivid Vision Home』を発表しており、意外なことに視力の改善効果だけでなく、斜視の治療にもVRは効果があるようなのです。
つまり、小さなお子さんにとっては注意が必要なVRの使用ですが、一方である程度の年齢に対しては、「視力回復」や「斜視の治療」効果があることも判明しています。
VRの「心」への影響は? VRが人の性格を変化させる?
NHKの番組「クローズアップ現代+」では『あなたの脳を改造する!? 超・映像体験(バーチャルリアリティー)』というセンセーショナルなタイトルで、VRがもたらす心への影響を紹介していました。
この番組の中で、インタビューを受けたスタンフォード大学のジェレミー・ベイレンソン教授はVRを使って、人間の心を操作できることを実験で証明してくれました。
番組の中では、VR空間の中を自由自在に飛び回り、子どもを助けることができるゲームを被験者に体験してもらい、その後の被験者の行動に変化がでるのか、という「スーパーヒーロー実験」が行われました。
この実験によって判明したのは、VR空間の中でスーパーヒーロー体験をした被験者は、その後スタッフがわざと落としたペンを拾うようになった――つまり、積極的に人助けをするようになったということでした。
にわかには信じられない現象ですが、ジェレミー・ベイレンソン教授
によると、「VR空間で善行を行うと、現実世界でも善良な心になりやすく、人助けをする可能性が高まる」という効果と「残虐性を増すようなVR体験をしたら、人間の悪い面が引き出される可能性がある」という効果があるとインタビュー内で答えていました。
あくまで短期的な実験による効果ですが、この実験の効果がほんとうだとするとVRには、人の性格や心をコントロールする魔法のような力があることになります。
参考:No.38132016年5月31日(火)放送
あなたの脳を改造する!? 超・映像体験(バーチャルリアリティー)より
VRコンテンツを自分で”選ぶ”ということの大切さ
VRには、その人の性格、人格に深く影響する「心」を変化させる可能性があります。
もちろん、恐ろしい力を秘めたVRを悪用すれば、人の心をコントロールすることが出来るかもしれません。
しかし、それは一方的にVRをヘッドセットをつけられ、強引に思想を教育するようなコンテンツを長期的に見せられた場合ならば、完全に身も心もコントロールされる可能性がありますが、それはあまりにも非現実的です。
またVRコンテンツを楽しむ前に「VRには心に深い影響を与える」という事を知っていれば、VRコンテンツから受ける心への影響を良い方向にコントロールすることは可能でしょう!
私たちは<VRコンテンツを選ぶ>という選択肢が与えられています。
一方的にVRコンテンツを与えられるのではなく、自分で「これは良い」「これは悪い」と選ぶことが出来るのです。
気分が落ち込んだ時には、残虐性の高いホラー系のVRコンテンツの利用は控えて、心が落ち着くような癒されるVRコンテンツを利用する。
また逆に、自分を鼓舞させたい時には、プロスポーツ選手になった気分を味わえるVRコンテンツを体験してみる、など心に大きな影響を与えるVRも使い方次第で、いくらでも良い方向に持っていくことが出来ます。
「VRは性格を変えてしまう」とネガティブに捉えるのではなく、「VRはその時の気分を変えてくれる」とポジティブに捉えれば、VRはアナタを、いえ人類を幸福へと導く福音となるかもしれません。
[ひとくちコラム④]VRを使ったメンタルヘルス、心の病にVRが効く?
VRを利用して、その人の心や性格が変わることは、決して悪いことばかりではありません。
うつ病の人や自殺志願者が、VRを利用することによって、その症状が和らぐことだってあるのです。
イギリスのオックスフォード大学の精神科医たちがバルセロナ大学の研究者たちと共同で、行ったVR技術を使った精神科治療に関する研究結果の分析では、特定の分野に関してであればVR技術を臨床試験や民間療法として利用できるという報告をしており、もしかするとVRの登場によって、メンタルヘルスの治療が大幅に改革されるかもしれません!
一部企業などでも、VRを使った自殺予防の研究も行われており、心の問題だからこそ手が出せなかった分野を、今後はVRを使って手助けできるようになるかも知れないのです。
VRも所詮は”道具”。どう使うかはアナタ次第です!
VRのような新しいツールを目の当たりにすると、多くの人は「期待」と「不安」を感じるものです。
その新しいツールによって生活が良くなる期待。
そして、その新しいツールによって、生活が悪くなる不安。
ただ、すでに世に出回っているさまざまな技術同様に、VRも所詮は“道具
“でしかなく、使い方次第で「神」にも「悪魔」にもなります。
果たして、それをどう使うのかは、アナタ次第。
すでにVRは、アナタが望むと望まざると関係なく、さまざまな分野で活用されはじめています。
ゲームや動画などの、エンターテイメントの世界だけでなく、教育の現場や代替医療の1つとしても、すでにVRは使われており、近い将来「スマホ」のようにVRを利用するのが一般的になるかも知れません。
その時に、せめて正しくVRを使うために、今回ご紹介した内容を覚えておいてください。
また当サイトでは、VRのメリットやリスクを軽減させる記事を多数公開しております。
「まだまだVRは不安だぞ!」
「どんなVRの使い方があるんだろう?」
とVRのことをもっとよく知りたいという方は、すでに掲載されているコラムの内容をチェックしてみてくださいね!