災害大国日本――。
自然災害が何かと多く、毎年のように地震や水害に見舞われている日本は諸外国に比べれば、防災意識は高い方です。
しかし「ただ災害に備える」のと「経験を元に災害に備える」のとでは、その意味合いが大きく異なり、やはり自身が被災した経験をもとに災害に備える方の方が、防災意識が高い傾向があります。
被災という経験はしなければ、しないに越したことはありません。
でも、だからと言って、災害大国日本で一生のうち、一度も何かしら大きな災害に巻き込まれない可能性は、決して“0”ではありません。
「まさか」の時に、自分や大切な人の命を守るため、自治体や企業でVRを活用した防災訓練がすすめられています。
そうVRはゲームや動画を楽しむ“だけ”ではない。
アナタや大切な人の命を守ることに繋がるかもしれない、防災に関するVRの活用について、今回はご紹介させて頂きます。
[VR✕防災]すでに行われているVRを使った防災の取り組み
VRを使った防災の取り組みは、着実に進められており、2017年9月3日に埼玉県鴻巣市の総合防災訓練では、VRを利用して火災からの避難体験を行う試みが実施されました。
他にも東京都三鷹市の市立第七小学校で行われた防災訓練や、新宿野村ビルで高層ビルの入居テナント向けの避難体験(日本初)でもVRは活用されており、着実に防災の分野でもVRを使った試みが広がりつつあります。
それにしても、なぜ最新技術の導入に腰が重い感がある学校や地方自治体が迅速に「VR」を使っての防災に力を入れているのでしょうか?
防災にVRが必要な理由。VRならではの”臨場感”が鍵
地方自治体がVRを使って防災訓練を行っている理由、それはVRならではの“臨場感”にあります。
先にも触れたように、実際の災害と防災訓練には「リアリティ」という、大きな隔たりがあるのです。
いくら真剣に防災訓練をしていようとも、自分が今いる建物が燃え盛っていような状況では、多くの人がパニックを起こしてしまい、防災訓練で学んだことを100%活かすことは出来ません。
しかし、VRは目の前に広がるバーチャルリアリティを脳が<現実>だと錯覚するような仕組みになっています。
頭のどこかでそれが現実ではないと思っていても、眼前に広がる仮想現実に影響され、私たちの脳は仮想現実を現実だと思い込む――そして、その結果、VRを用いた防災訓練には実際に災害の被害にあった時と同じような臨場感を味わうことが出来る。
つまり、端的に言えばVRを利用することで<災害に慣れる>ことが可能であり、災害に慣れているからこそ、本物の災害時に迅速に防災・避難することが可能になるのです!
体験できる災害の種類もいろいろ。災害大国日本だからこそ、防災にVRの活用が望まれる
防災にVRを活用するという試みは、今後どんどんと増えていくことでしょう。
ゲーム会社なども自身が持つゲーム開発の技術を応用し、VRを使ってよりリアルな避難訓練ができるようになるソフトを開発しており、近い未来では防災訓練にVRが当たり前……という時代がくるかもしれません。
また、VRで体験出来る防災訓練の種類も増え続けており、火災や地震だけでなく、水害、津波などの、多種多様な災害シチュエーションも体験できるようになっています。
さらに専修大学ネットワーク情報学部 佐藤慶一研究室では、災害時に負担が大きい認知症患者などの”被災弱者”に対する啓発を目的としたVRコンテツも開発しており、幅広い意味でVRが災害大国日本を救うことになるでしょう。
数多の災害を経験し、防災設備が他国よりも充実し、国民の防災意識も高い日本ですら100%災害を防ぐことは出来ません。
誰の身にも「まさか」の瞬間が訪れる可能性がある。
その「まさか」の時に、VRを使った防災訓練が多くの人の命を救うことになることを祈らずにはいられませんでした。